みなさま、おはようございます。6代目です。
加茂定ブログにお越しいただきありがとうございます。
前回ブログでは、修理内容について迄をお話しいたしました。
・紙が破れている部分の修復は行う
・紙の汚れ部分の修復は行わない
過去帳の紙の状態を鑑み、破損部分のみの修復となりました。
本ブログでは、修理工程についてお話しいたします。
<紙の破れ その1>
<紙の破れ その2>
<紙の破れと虫食い その3>
上の写真はお預かりした過去帳の一部写真ですが、
天地に渡り紙が破れ分離していました。
その3の写真には、虫食い跡(丸い穴)も見られます。
<紙の破れ その4>
<紙の破れ その5>
<紙の破れ その6>
また、その4~6のように、部分的に断裂している箇所もありました。
修理方法としましては、蛇腹の断裂箇所に新しい和紙を裏打ちします。
<紙の破れ その6>のように、蛇腹部ではない部分にも裏打ちします。
<蛇腹部 谷側の表側>
<蛇腹部 谷側の裏側>
鉛筆で指し示しています折り目は、蛇腹部の谷側です。
お預かりの過去帳は、谷側の大部分に一部断裂・全断裂が起きていました。
<全ページ 裏打ちの一例>
写真を拝見した時は、全ページに渡り裏打ち予定のみでした。
上の写真をご覧ください。
過去帳の天地寸法に合わせた新しい和紙を、既存の紙の裏側に貼ることです。
この作業を裏打ちと言います。
しかし、現物を見せていただき、思いのほか折り目の損傷が激しいことが判明しました。
現状破れていない折り目も、
「このまま放置しておけば新しい断裂が起こる」
という職人さんの見立てでした。
<蛇腹部 ピンポイント裏打ちの一例>
そこで、全ページに裏打ちを行う前に、
蛇腹部すべての山側・谷側にピンポイント裏打ちすることになりました。
こうすることで、折り目の耐久性はグッと上がります!
つまり、上の写真のように折り目部分は「2層裏打ち」になるということです。
過去帳は閉じたり開いたりしますので、折り目部分は特に摩耗が激しくなります。
これから先もお使いになられますので、強度を上げることを最優先にしたご提案でした。
一方で、2層になるということは厚みが増してしまいます。
ピンポイント裏打ちと全ページに渡る裏打ちで使われる紙の厚さが加わるからです。
過去帳が膨れてしまう難点がでてしまいますが、
お客様ご了解のもと2層式の裏打ちで進めることとなりました。
この点も職人さんに直接見て頂けたからこそのご提案でした。
写真だけでは見えないこともございますので、現物で判断することはとても大切なことになります。
まとめますと、
・全断裂や部分断裂を起こしている折り目にピンポイント和紙を貼る。
紙を繋げるという役目と、今後に備えた補強の役割も果たしてくれます。
・今後断裂が起きそうな折り目(現在は切れていない箇所)にもピンポイント和紙を貼る。
紙を補強するという役目になります。
・さらに強度を上げる為にピンポイント裏打ちの上に全体裏打ちを行う。
という修理方法となりました。
それでは、蛇腹部の裏打ち模様をご覧ください。
<蛇腹部用 貼り和紙>
均等な大きさで紙を裁断し、準備します。
過去帳の天地に合わせた長さで、すべてのページ分を作られました。
※部分断裂箇所もピンポイントではなく、天地に合わせて裏打ちします。
<蛇腹部 裏打ち作業中>
ピンセットを使い、山側と谷側の折り目に合わせて貼り付けています。
根気のいる作業になります!
<蛇腹部 裏打ち作業終了>
<蛇腹部 裏打ち作業終了 クローズアップ>
折り目への裏打ち作業終了です。
傾くことなく、真っ直ぐに裏打ちされています。すごい!
次に虫食い箇所です。
上の写真のように、虫食いの穴に合わせた新しい和紙を裏打ちします。
ところがですが、
過去帳の中に虫食い箇所の紙が挟まっており、残っていました
ですので、新規で和紙を補充するのではなく、残っていた紙を再利用いたしました!
罫線もそのまま表現できますので、残っていて良かったと思います
こうして断裂箇所と穴開き箇所の裏打ちが終了です。
次に全体裏打ちになります。
ピンポイント裏打ちを済ませた紙を、日付順に並べてあります。
全体裏打ちは、すべての紙を繋げる最終作業になります。
間違えて結合させてしまう訳にはいきませんので、確認の意味も込めて並べています。
全体裏打ちを行うための作業前の模様です。
刷毛が写っていますが、裏打ちした際に生じる空気やシワを取り除くためです。
紙が破れないように、慎重に刷毛を使われます。
もちろん、糊付けの補助になっていることは言うまでもありません。
全体裏打ちを行ったことで、裏側が綺麗になりましたね
この作業を終えて、完成となります!
各修理を終えた箇所を見ていきましょう。
<紙の破れ その1 修理後>
文字を分断していた破れは、元通りに戻りましたよ
「三寳」という文字でした。
<紙の破れ その2 修理後>
天地に渡り破れていた箇所も裏打ちで繋がりました
<紙の破れ その3 修理後>
当初は虫食いと思われていた箇所も穴がふさがりました!
再びになりますが、もう一度同じ写真を入れておきますね
<紙の破れ その4 修理後>
<紙の破れ その5 修理後>
部分断裂もしっかりと繋がっています
<紙の破れ その5 修理後>角度を変えて撮影してみました。
良い感じで繋がっています!
<紙の破れ その6 修理後>
蛇腹部では無い箇所の修理も、無事に出来ております。
寄りの撮影ですが、綺麗に戻っています
「廿」は、「20」を漢字表記した字です。
<修理後の過去帳厚み>
「裏打ちが2層になり厚みが増す」
とお話ししましたが、上の写真をご覧ください。
裏打ちの紙の厚さが加わったので、全体的に膨れました。
<修理前の過去帳厚み>
お預かり時と比較しますと、一目瞭然ですよね。
<修理後の過去帳厚み>
こちらの角度から見ますと、片方が浮き上がっています。
これは、折り目の谷側が2層裏打ちを行ったためです。
<修理前の過去帳厚み>
お預かり時は、ペッタンコですね
裏打ちで、紙の断面も綺麗になりましたね。
裏打ちは、補強という意味では抜群の手法です。
しかし、「厚みが増す」「膨れる」という結果も起こります。
この点を受け入れていただくかどうかは、お客様次第となります。
そもそも論なのですが、
実は、新しい過去帳を購入して、書き写す方が断然お安いです。
お客様にも当然お話ししておりましたが、
「お父様の文字を残したい」
との思いで修理をさせていただきました。
過去にアップしました過去帳修理のお話しでも、
「書かれていました書体が綺麗で、どうしても引続き過去帳として使いたい」
という理由で修理をさせていただきました。
既存の過去帳に書かれている文字を残したい!
という方には、修理はお勧めです。
でも、そこまで思われない方は、
新しい過去帳を購入して書き写していただいた方が格安と思います。
どちらを選ばれるかはお客様次第なのですが、
弊社はそのお手伝いが出来るよう努めたいと思います。
ご質問やご不明な点などございましたらば、
些細なことでもかまいませんので何なりとお問い合わせください。
しっかりとサポートさせていただきます!
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<以下、関連ブログです>
在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その1-1
ご遠方のお客様でしたので、過去帳はお送りさせていただきました。
受取りして頂けたかどうかが心配でしたので、確認のメールを送りましたところ嬉しいお返事をいただきました。
お母様にもお子様にも、ご満足いただけて良かったです。
この度のご依頼、誠にありがとうございました。
さて、先週末はビックリするほどの暑さでしたね
雨ばかりが続く日でしたので、久しぶりに「真夏!」を感じられる日々でした。
それにしても、本当に暑かったです
気が付けば、今日と明日で8月も終わりです。
夏休みの思い出は作れましたか?
コロナ禍では、思うように思い出も出来ないですよね。。。
かく言う私も
何も思い出などありません(笑)
お店と家の往復だけでしたね(笑笑)
来年こそは、普通の夏休みを送りたいですよね♬
ホントに普通で良いので♬♬
では、本日もみなさまにとって良き1日となりますように!
合掌
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