みなさま、おはようございます。6代目です。
加茂定ブログにお越しいただきありがとうございます。
前回ブログでは、修理内容までをお話しさせていただきました。
おさらいになりますが、
① 本紙はそのまま活用。「赤茶褐色」「シミ」は水洗いのみ
※元紙の耐久性を考慮し、薬品を使ってのシミ落としは行いませんでした。
※水洗いですので、「シミ」は完全除去ではなく、薄まる程度です。
※本紙が経年劣化で赤茶褐色です。水洗いで、こちらも薄まる程度です。
② 表装は既存の柄と同じ裂地が無い為、他の柄でご提案
※裂地は「きれじ」と読みます。織物のことです。
③ 金具はメッキ直しを行い、再利用
上記内容で修理させていただくことになりました。
それでは、修理工程をお話ししたいと思います。
改めてお預かり時の全体写真です。
掛軸上部の破損が目に留まり、痛々しいです。
新しい裂地で表装し直しますので、出来上がりが楽しみです!
本紙部分です。
こちらは、そのまま活用し、紙の汚れを落とすのみとなります。
完全に落とすのではなく、「薄まる」という意味です。
<本紙洗い 表側>
※写真①
既存の表装から本紙を切り抜きます。
養生紙(薄紙)を載せ、スプレーで水気を吹き付けます。
表面の汚れを、養生紙に吸着させるための作業だそうです。
「水洗い」と表現していますが、衣服のようにゴシゴシ洗うことではありません。
<本紙洗い 裏側>
本紙裏側も同様の作業を行います。
こちらは、本紙の裏側に貼られている「裏打ち」を剥がす準備です。
本紙を水気でふやかして、剥がしやすくするためです。
「裏打ち」とは、本紙の裏に別の紙を貼り合わせることです。
本紙の「強度を上げる」や「しわやたるみを防ぐ」為に行われるそうです。
<総裏打ち 剥がし作業>
※写真②
裏打ちを剥がしている途中の写真です。
綺麗に剥がれていっていますね♬
<本紙肌紙 剥がし作業>
※写真③
裏打ちと本紙の間に、もう1枚裏打ちがされています。
この紙のことを、「本紙肌紙」と呼ぶそうです。
上の写真は、「本紙肌紙」を剥がしている模様です。
文字がクッキリと出てきました!
1回目に剥がしている紙は、「総裏打ち」と呼ばれるそうです。
紙の断面を整理しますと、
1枚目:本紙(お題目が書かれた紙)※写真①
2枚目:本紙肌紙(1回目の裏打ち)※写真③
3枚目:総裏打ち(2回目の裏打ち)※写真②
3つの層で作られている!ということになります
<部分補修作業>
本紙肌紙を剥がしてみて、赤の☆印部分(写真左)に修理の形跡がありました。
つまり、本紙に直接修理が行われていたということです。
過去に部分的に補修されていましたが、劣化が見受けられました。
この部分だけを剥ぎ取り、赤の☆印部分(写真右)に新しい紙を裏打ちしました。
よ~~く見ていただくと、白っぽくなりましたよね♬
<本紙肌紙 裏打ち>
※写真④
本紙の修復を終え、新たに本紙肌紙を貼り終えた状態の写真です。
ここから「裏打ち」の始まりです。
<折り伏せ>
※写真⑤
こちらの写真は、「折り伏せ」という作業だそうです。
白い筋がたくさん入っておりますが、
折り目に新しい紙を当て、さらに補強しています。
折り目とは、上の写真の赤矢印部分のことです。
掛軸は巻いて収納されますので、
巻いたり伸ばしたりの繰り返しによる折れが生じます。
裏打ち(本紙肌紙や総裏打ち)だけで済ますのではなく、細かな部分にも目を配ります。
この「折り伏せ」という作業は、修理工程の中でも手間と時間が掛かるパートの1つだそうです。
根気よく時間を掛けて、折り目の特定と補強が進みます。
職人さんの目も、鋭く光っていることでしょう
<増し裏張り込み>
※写真⑥
「折り伏せ」作業を終え、更なる補強を兼ねて、もう1枚裏打ちしていただきました。
これを「増し裏張り込み」と呼ぶそうです。
上の写真は、その時の状態の写真なのですが、あまり変化を感じられないですね
この後、金襴で表具をする際に、最後の裏打ちを行います。
これを、「総裏打ち」と呼ぶそうです。
お預かり時は3層で仕立てられた掛軸でしたが、
1枚目:本紙(お題目が書かれた紙)※写真①
2枚目:本紙肌紙(1回目の裏打ち)※写真④
3枚目:折り伏せ(2回目の裏打ち)※写真⑤
4枚目:増し裏張り込み(3回目の裏打ち)※写真⑥
5枚目:総裏打ち(4回目の裏打ち)
修理後は、紙の層は5層となりました。
<修理後 全体写真>
修復後の写真です。
まずは、本金襴の輝きが一番に目に飛び込んできますね♬
<修理後 上部>
ビリビリに破れていました風帯も綺麗になりました。
風帯は中縁のトミタ雲でお作りしています。
<お預かり時 上部>
お預かり時と比較しますと、良く分かりますね♬
<修理後 下部>
下部も同様にキラッキラです
当然ですね
<修理後 本紙>
本紙の折り目も消えており、
シワひとつないキリッとした本紙となって蘇りました。
<修理後 本紙拡大>
アングルを変えると、シワが無いのが分かりやすいかと思います。
<修理後 金具上部>
<修理前 金具上部>
<修理後 金具下部>
<修理前 金具下部>
金具もそれぞれ、メッキ直しをしていただきました。
落ち着いた光沢が特徴の消しメッキ仕上げです。
<修理後 外縁と中縁の境い目>
<修理前 外縁と中縁の境い目>
外縁と中縁の境い目も、真っ直ぐに裁断された裂地がキリリと綺麗です♬
<修理後 中縁と一文字の境い目>
<修理前 中縁と一文字の境い目>
こちらもキリリと綺麗です!
既存は同系色でしたが、一文字を白に変えたことでコントラストがでましたね。
一文字の部分は職人さんお任せセレクトで、
素晴らし色の配色で仕立てていただきました。
<修理前と修理後>
修理の前後、比較写真になります。
並べますと、本紙の色が薄まりましたね。
商品名:日蓮宗 御本尊御曼荼羅 掛軸 表装替え
仕 様:外縁 本金襴(紺)蓮華柄仕立
中縁 本金襴(茶)トミタ雲柄仕立
金具は消しメッキ直し
原産国:京都
サイズ:表装 丈123cm 軸巾50cm
本紙 丈50cm 軸巾36cm
それでは、納品現場をご覧いただきましょう。
そして、お檀家様とはこの時に初めてお会いさせていただきました
ご自宅に上がらせていただいて、ビックリ
お寺の本堂のような設えに驚かされました
掛軸の寸法が丈123cm 巾50cmですので、その大きさを連想できるかと思います。
正確には測っておりませんが、高さ240cm 巾180cm近くはあろうかという祭壇スペースでした!
聞けば、ご先祖様にお寺でお勤めされていた方がいらっしゃったそうです。
お仏壇も持っていらっしゃいましたが、ただただ驚かされました
お祀りされていた仏具を元の位置に戻し、取付け完了です。
掛軸の開眼法要日に向けて、祭壇をリフォームされたそうです。
壁の金紙が、ピカピカに光り輝いているのを見ていただくとお分かりになるかと思います。
「綺麗やわ~~~」
修理された掛軸を見て、お檀家様から出た一言です。
今年の3月末から取り掛かり、約4ヶ月の修理期間を経ての納品でした。
ご注文をいただく瞬間も嬉しいのですが、
やはり納品後にお客様が喜ばれているお顔を見るのが一番嬉しいです♬
でも、お渡しする瞬間はモーレツに緊張します(笑)
ご住職様もお越しになられていましたのでド緊張の納品でしたが、
無事、上手く納まって一安心です
言うまでもなく、ご住職様にもお喜びいただけました!
またのご紹介をお待ち申し上げます(笑)
後からご住職様に教えてもらったのですが、
「掛軸に早く戻ってきて欲しいわぁ」
と、仰っておられたとお聞きしました。
ご先祖様が残された大事な掛軸、そう思われるのも当然ですよね。
長い時間お預かりしてしまい、すみませんでした。
しかし、すべては末永くお使いいただくことを第一に修理させていただきましたので、
お許しいただければと思います。
時間は掛かりますが、丁寧に、そして綺麗に仕上がります!
痛みの有る掛軸をお持ちでしたらば、修理してみるのはいかがでしょうか?
以前に床掛軸の修理をご紹介させていただきましたが、同じ方にお願いしています。
京都の職人さんです!
今年のお盆や秋彼岸には間に合いませんが、
今からでしたらば2022年の新年には間に合います。
ご先祖様と共に、清々しい元旦をお迎えいただけるかなと思います。
ご供養になることは、言うまでもありません。
掛軸はもちろんのこと、床掛軸の修理をご検討中の方がおられましたならば、一度お問い合わせくださいませ。
職人が掛軸の状態をしっかりと見定め、最適の方法でご提案させていただきます。
些細なことでもかまいませんので、何なりとお問い合わせください。
【お問い合わせ先】
ホームページからのお問い合わせはこちらからお願いいたします。
直通メールアドレス 0883@d2.dion.ne.jp からもご利用いただけます。
※返信にお時間がかかる場合もございます。
<以下、関連ブログです>
床掛軸の表装替えをご下命いただきました その1-1 ~御曼荼羅~
床掛軸の表装替えをご下命いただきました その1-2 ~御曼荼羅~
掛軸の表装替えをご下命いただきました その2ー1 ~御曼荼羅~
この度のご注文、誠にありがとうございました。
そして、ご紹介いただきましたご住職様、ありがとうございました。
さて、先週末は雨がすごかったですね。
みなさんのお住まいの地域は大丈夫だったでしょうか?
家の近所ではないですが、同じ市内で道路が崩れて陥没するということがありました。
住んでいる所なので、京都市内ではありませんよ。
でも、京都市内でも観光地でがけ崩れが起きていました。
昨日は午後から晴れ間が出ましたが、今週も雨予報です。
雨で地盤が緩むそうなので、ご自身の身の安全を最優先にしてください。
最後になりますが、この度の豪雨で被災されたみなさま
心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧と安心のできる日常に戻られることをお祈り申し上げます。
合掌
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